SLEの心臓・血管・
骨への影響
~自覚しにくい
臓器への影響について
相談することの大切さ~

SLEでは、全身の症状(発熱、倦怠感)や皮膚・粘膜・関節などの自覚しやすい症状のほか、腎臓や心臓・血管・骨などのさまざまな臓器に自覚しにくい症状があらわれることがあります1)
こちらのコラムでは腎臓への影響についてご紹介しました。今回は心臓・血管・骨への影響についてご紹介します。

各臓器への影響について

皮膚の赤い発疹、関節症状などの症状に比べ、心臓・血管・骨などへの影響は自覚しにくいかもしれません。
心臓・血管・骨への影響が日常生活にどのように関わってくるのかについて見ていきましょう。

心臓・血管

SLEの患者さんには、心膜炎・胸膜炎、心筋炎、心電図異常などがみられることがあり1,2)、日常生活において胸の痛みや動悸、息切れ、息苦しさなどが生じることもあります。また、血管に炎症がみられることがあり、それによって動脈硬化が原因で起こる心筋梗塞や心不全などの心血管イベントを生じる可能性が、一般の人と比べて約2倍になるという報告があります2)

SLEの治療で使用される薬剤の種類によっては骨の密度が低下し、骨粗しょう症になることがあります1)。また、骨への血流が妨げられることで、骨壊死が生じることがあります1)。それによって日常生活においても、例えば転倒しただけで骨折しやすくなるなど注意が必要になることがあります3)

さらに、SLEの治療薬は種類によっては目にも影響を及ぼすことがあります。目への影響が日常生活にどのように関わってくるのかについてご紹介します。

SLEの治療薬の長期使用によって、レンズの役割をする水晶体が濁り白内障になる、眼圧が上がり緑内障になる、あるいは、角膜に炎症をおこして角結膜炎になることがあります1,4)。また、眼の一番奥にある網膜に異常が生じることが報告されています5)。それによって目の疲れや異物感を感じたり、目が見えにくくなったりすることがあるため、日常生活では仕事や読書、車の運転などに不便を感じることがあります。

臓器への影響について相談することの大切さ

このように臓器への影響は自覚しにくいこともあるため1)、気づかないうちに症状が進行してしまう可能性があります。臓器への影響を早期に発見し、適切な疾患管理を行っていくことが大切です6)。そのため、症状が現れていなくても定期的に検査を受けるなど、現在の体の状態を知っておくことが望ましいでしょう。
ご自身の現在の臓器の状態や、臓器への影響について気になることなどがあったら早めに医師に相談することで早期発見につながり7)、臓器への影響を軽減する方法についてアドバイスを受けることができるかもしれません。
定期的に検査を受診し、適切なタイミングで適切な疾患管理を行うことによって、SLEの症状をコントロールしやすくなり、その結果、生活の質の向上につながる可能性があります6)

図1:「先生との相談ヒント集」の画面

症状や臓器への影響についてどのように相談したらよいか迷われたら、「先生との相談ヒント集」(図1、使い方についてはこちらのコラムをご参照ください)を活用してはいかがでしょうか。

  • 1) 田中良哉 薬局 2015; 66: 28-33.
  • 2) SR Schoenfeld, et al. Semin Arthritis Rheum. 2013; 43(1): 77-95.
  • 3) A Zonana-Nacach, et al. Arthritis Rheum. 2000; 43(8): 1801-1808.
  • 4) 沢美喜ら 日本眼科学会雑誌 2002; 106(8): 474-480.
  • 5) M Wakakura and S Ishikawa. Br J Ophthalmol. 1984; 68(5) 329–331.
  • 6) A Mak, et al. Nature Reviews Rheumatology. 2013; 9: 301–310.
  • 7) A Kuhn, et al. Dtsch Arztebl Int. 2015; 112(25): 423–432.