倦怠感のセルフケアと
伝え方

全身性エリテマトーデス(SLE)の症状のひとつに倦怠感がありますが1)、目に見えにくい症状のため、医師や周りの人への伝え方について悩まれたことがあるかもしれません。2024年6月9日に開催したSLE疾患啓発セミナーでも同様の話題が上がりました。今回のコラムでは、「倦怠感のセルフケア、医師あるいは患者視点の診察時のコミュニケーションの工夫」についてご紹介します。

倦怠感のセルフケアのポイント

倦怠感はご自身でケアをすることによって、軽減させることができるかもしれません。セルフケアの方法の中からご自身にあった方法を選択し、取り組んでみてはいかがでしょうか。今回は以下の2つをご紹介します。

マインドフルネス
マインドフルネスは、今この瞬間に集中している状態を指します2)。瞑想、呼吸法など様々な方法がありますが、ご自身にあった方法を見つけ、不安や倦怠感などから解放されて3)、今の自分自身に意識を向けてみてはいかがでしょうか。
運動
ご自身の体の負担にならない範囲で運動するのが良いでしょう。基礎体力は人によって異なるため、全員が同じ量の運動をする必要はありません。翌日に倦怠感がひどくならない程度で運動することを心がけて、基礎体力の増加とともに徐々に運動量を増やすのが良いでしょう4)
今回は2つの方法をご紹介しました。セルフケアについて疑問に思うことがあれば、医師に相談してアドバイスをもらうのも良いかもしれません。

診察時のコミュニケーションにおける
工夫

診察時、医師と患者さんが注目している症状にギャップが生じることがあります5)。患者さんが気になっている症状や普段行っている疾患管理について医師に伝えることでギャップをなくし、お互いが納得して疾患を管理していくのが良いでしょう6)
医師は診察する際にどのようなことを考え、どのような工夫をしているのでしょうか?
お互いを信頼し尊重しながら診察を行うために、診察時のコミュニケーションにおける工夫をご紹介します。

受容・承認だけではなく、問題解決の視点でコミュニケーションをとる
診察時は、倦怠感などの目に見えにくい症状があるということを医師と患者さんで共有することが大切です。さらに、患者さんの話の中から何が原因かを探り、そのうえで治療や対応を一緒に決定するのが望ましいでしょう7)
患者報告アウトカム*ツールを活用する
医師が客観的に患者さんの健康状態などの情報を得るために、患者報告アウトカムツールを利用することがあります。患者さんの自記式または面接式の調査により直接得られる患者さんの回答に基づいて今の状態がスコア化されることによって、医師と患者さんのコミュニケーションの促進にもつながります8)*治療満足度、症状の程度、健康関連の生活の質などを測定する患者さんの主観的な指標

続いて、患者さんは診察時にどのような工夫ができるのか、2つのポイントをご紹介します。

先生とのコミュニケーションを大切にし、正直に話す
先生のお話を聞くだけでなく自ら話し、体が不調な時は、状態を分かってもらうために何回も繰り返して伝えることで、コミュニケーションは良い方向に向かう場合があります。このようなコミュニケーションを積み重ねることによって、患者さん自身が納得して、前向きに治療を続けていくことができると考えられます9)
メモをとる
先生から服薬指導を受け、服薬状況のメモをとるよう指導されることがあります4)。その際服薬状況とともに体調の変化についても記載し、先生と共有することによって、診察時の会話がスムーズになることが期待されます。

診察時に相談する内容の参考として「先生との相談ヒント集」(使い方についてはこちらのコラムをご参照ください)が公開されています。診察時にはこちらのツールを活用してみても良いかもしれません。

セルフケア、周りの人との
コミュニケーション時のポイント

・セルフケア時に気をつけたいポイント
病気の経過については、患者さんの症状の広がりと重症度によって異なります10)
運動や体を動かすときの活動量は体に負担のない程度にとどめ、翌日に倦怠感がひどくならないように気をつけましょう4)
・周りの人とのコミュニケーション時に気をつけたいポイント
日常生活において周りの人のサポートや理解が必要な時に、疾患について伝えてもわかってもらえないようなこともあるかもしれません。そのような時は、気にしすぎてストレスにならないように気をつけることが大切です11)
  • 1) 田中良哉 薬局 2015; 66: 28-33.
  • 2) Kabat-Zinn J. Full Catastrophe Living. Delta Publishing; New York: 1990.
  • 3) 藤澤大介ら. 訪問看護と介護 2017; 22: 208-212.
  • 4) 橋本 博史: 全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第3版、日本医事新報社、東京、2017.
  • 5) V Golder, et al. Sage Journals. 2017; 27(3): 501–506.
  • 6) Elwyn G, et al. J Gen Intern Med 2012; 27: 1361-1317.
  • 7) Charles C, et al. Soc Sci Med 1997; 44: 681-692.
  • 8) Dawson J, et al. BMJ. 2010; 340: c186.
  • 9) Huiwen Luo, et al. BMC Med Inform Decis Mak 2021; 21(1): 25.
  • 10)「難病情報センター 全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」(厚生労働省)
  • https://www.nanbyou.or.jp/entry/53
    (2024年7月12日に利用)
  • 11)「難病情報センター 全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)」(厚生労働省)
  • https://www.nanbyou.or.jp/entry/359
    (2024年7月12日に利用)