ライフステージに合わせたSLEとの向き合い方
全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫機能の異常によって起こる自己免疫性疾患(膠原病)の一つで、皮膚、関節、腎臓など全身にさまざまな症状があらわれます1)。
SLEの疾患管理の目標は「疾患の寛解*または低疾患活動性(免疫機能の異常による影響が少ない状態)を達成し、それによって患者さんの生活の質を改善すること」であるといえるでしょう2)。この目標を達成するためには、就業、妊娠・出産、介護などのライフステージに合わせた疾患管理と自分らしいライフスタイルを築いていくことが大切です。
*病気が完全に治った「治癒(ちゆ)」という状態ではありませんが、病気による症状や検査異常が消失した状態を「寛解」と呼びます。
「難病情報センター 用語集」(厚生労働省) https://www.nanbyou.or.jp/glossary (2024年10月1日に利用)
ライフステージに合わせた疾患管理に
ついて
患者さんのライフステージが変化していくなか、どのようなことに注意しながら疾患を管理していけば良いのでしょうか。就業、妊娠・出産、介護などのライフステージに合わせた疾患管理について見ていきましょう。
就業
患者さんが仕事を続けるためには、症状のコントロールと職場環境の調整が必要な場合があります。定期的に診察を受け疾患管理を行うとともに、疲労やご自身の体調に応じて早めに休憩や休暇をとる、睡眠や食事などの体調管理を行う、あるいは、早めに医療機関を受診することも大切です3)。職場の方にご自身の状況を伝え、必要に応じて主治医や産業医の意見を聞きながら職場環境を整えていくのが望ましいでしょう3)。
妊娠・出産
妊娠前後には、服用している薬の調整が必要になることがあるため、妊娠を計画する際は主治医と相談し疾患管理を行うことが推奨されます4)。患者さんの状態によって異なりますが、少なくとも6ヵ月以上疾患の活動性がないこと、そしてできれば腎疾患など臓器への重篤な影響があらわれていないのであれば、妊娠・出産に臨みましょう4)。妊娠・出産により症状が不安定になることがあるため、主治医と相談のうえ、各科の連携がとれた医療機関で慎重に経過を見てもらうのが良いでしょう4)。
介護、家事
介護や家事は患者さんにとって負担が大きくなることがあります。倦怠感や関節痛などの症状がある場合は1)、家族や友人に頼ったり、難病相談支援センター5)などに相談し地域のサービスを利用してサポートを受けたりすることで、負担が軽減する可能性があります。また、家事の場合には時間配分を工夫する、例えば30分程度家事をした場合、5~10分くらいの休憩をとることで6)、体の負担を軽減することができるかもしれません。
健康で自分らしい生活を送るために
患者さんが健康で自分らしい生活を送るためには、日頃から健康管理を行うことが重要です。どのようなことに気をつけながら健康管理を行っていけば良いでしょうか。4つの項目についてご紹介します。
食事や運動
患者さんが健康で自分らしい生活を送るために、日頃からバランスのとれた栄養価が高く消化の良い食事をとることや、翌日に疲れが残らない程度の運動などが推奨されます6)。もし、腎臓や心臓など臓器への影響が見られる場合には、その症状や程度に応じて食事療法を行いましょう6)。
喫煙の防止7)
SLEの患者さんが喫煙した場合、皮膚症状が強くあらわれる場合があります。薬剤の治療効果が得られにくくなることもあるため、禁煙を心がけることが望ましいでしょう。
感染症への対策
SLEの疾患管理でステロイドや免疫抑制薬を使用している場合、細菌やウイルスなどに対する免疫機能も抑えられてしまうため、感染症にかかりやすくなります8)。手洗い、うがい、マスク着用などで感染症を予防しましょう。
趣味や自己実現への取り組み
趣味や自己実現に関する活動は、心の健康を保つために大切です。ご自身の好きなことを楽しむ時間を持つことで、疾患に対するストレスの軽減4)、生活の質の向上につながることがあるでしょう。寛解期には、過労にならないようご自身の体調を見ながら6)興味を持った新しい趣味に取り組むことで、健康なライフスタイルを築くきっかけになるかもしれません。
SLEは全身にさまざまな症状があらわれるため1)、日常生活に影響することがあります。患者さんの症状に応じて、適切な疾患管理を行うことで、自分らしい生活を送れることが期待されます8)。ライフステージに合わせて医師や医療従事者と相談しながら疾患管理を行い、ご自身の体調に合ったライフスタイルを見つけて健康で自分らしい生活を送ってみてはいかがでしょうか。
- 1) 田中良哉 薬局 2015; 66: 28-33.
- 2) A González-García, et al. Rev Clin Esp (Barc).
2023; 223(10): 629-639. - 3)「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン 令和6年3月版」(厚生労働省)
- 4)「難病情報センター 全身性エリテマトーデス
(SLE)(指定難病49)」(厚生労働省)https://www.nanbyou.or.jp/entry/359 (2024年10月1日に利用)
- 5)「難病情報センター 都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧」(厚生労働省)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/1361 (2024年10月1日に利用)
- 6) 橋本 博史: 全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第3版、日本医事新報社、 東京、2017.
- 7)「病気に関する情報箱」(日本リウマチ学会)
https://www.ryumachi-jp.com/guidance/iinkai/
pleasure/infobox/ (2024年10月1日に利用) - 8)「難病情報センター 全身性エリテマトーデス
(SLE)(指定難病49)」(厚生労働省)https://www.nanbyou.or.jp/entry/53
(2024年10月1日に利用)