SLEの皮膚・関節への
影響と生活の工夫
~季節を問わず紫外線
対策を~
紫外線といえば夏の強い日差しを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際には一年を通して私たちに降り注いでいます1)。紫外線はSLEの症状を悪化させるひとつの要因となることがありますので2)、季節を問わず生活に紫外線対策を取り入れることが大切です。
今回のコラムでは、皮膚の症状などの「SLEの自覚しやすい影響」について説明し、紫外線対策など日常生活でできる具体的な工夫についてお伝えします。
SLEの自覚しやすい影響の例
SLEではさまざまな臓器や部位に影響が表れますが、自覚しやすいものとして皮膚や関節への影響があります3)。
- ❶皮膚への影響
- 鼻から両側の頬に、蝶が羽を広げたような形をした赤い発疹(蝶形紅斑【ちょうけいこうはん】)が生じることがあります4)。また、丸い円板状の赤い発疹(円板状紅斑【えんばんじょうこうはん】)が顔、耳、胸の上部などに現れることもあり、これらの紅斑は紫外線を浴びると悪化する場合があります4)。紫外線を浴びたあとに皮膚に発疹などが生じる日光過敏症が起きることもあります5)。一方、冷たいものに触るなどの寒冷刺激を受けたときに、指が白や紫色になるレイノー現象が起きる場合もあります4)。
- ❷関節への影響
- 指や手、ひざ、ひじ、肩などに関節痛や関節炎が現れることがあります4)。朝起きたときに、関節にこわばりが生じることもあります4)。関節痛は、痛む関節が変わる移動性の場合があります4)。SLEの関節炎では、通常は軟骨や骨の破壊は伴わず、関節の変形も伴わないことが多いです6)。
日常生活でできる具体的な工夫
自覚しやすい皮膚や関節への影響に対し、日常生活でできる具体的な工夫をご紹介します。
- ❶紫外線への対策
- SLEの症状は日光に当たると悪化する場合があるため2,5)、日々の紫外線対策を見直してみませんか。紫外線が強い時間帯はできるだけ外出を避け、外出する場合は日焼け止めを塗り、長袖の服や帽子、サングラス、日傘などで紫外線を防ぎましょう7)。日焼け止めは、手などで触れたり汗をかいたりすると落ちてしまうので、数時間ごとに塗り直しましょう7)。
- ❷関節の痛みへの工夫
- 関節の痛みにより、家事などをするのが難しい場合があるかもしれません。そのような場合は、ご家族に家事などのサポートをお願いしたり、献立に冷凍食品や無洗米などを取り入れたりして負荷を減らすこともひとつの工夫です。また、市販のキッチングッズ(ピーラー、フードプロセッサーなど)や、リウマチの患者さん用に作成されている自助具8)(蓋のオープナー、弱い力で切れるハサミなど)を活用してみましょう。
- 自分らしいライフスタイルを過ごせるよう、日常生活にこれらの工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか。
- 1) 気象庁ホームページ 日最大UVインデックス(解析値)の月別累年平均値グラフ(東京)(https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/link_uvindex_norm56.html)(2024年8月21日に利用)
- 2) 橋本博史(著) 全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第3版. II章 病因. p.23-76. 日本医事新報社(東京)
- 3) 田中良哉 薬局 2015;66:28-33.
- 4) 橋本博史(著) 全身性エリテマトーデス臨床マニュアル 第3版. IV章 診断. p.89-137. 日本医事新報社(東京)
- 5) Millard TP, et al. Lupus. 2000;9:3-10.
- 6) 加藤将ら 日内会誌 2010;99:2401-2406.
- 7) 「紫外線環境保健マニュアル 2020」(環境省環境保健部環境安全課)(https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf)(2024年8月21日に利用)
- 8) 後藤喜代美ら 臨床リウマチ 2012;24:290-296.